T-houseは前橋市の住宅街に建つ戸建住宅です。区画整理前の2m道路を挟む2つの敷地にそれぞれ4人家族の家とガレージを建てるという計画のうち、今回は先に奥の旗ざお状の敷地へ家を建設することとなりました。設計にあたり、将来を踏まえ2つの敷地をどのようにつなげていくか、また古い家が密集する敷地で採光・視界の抜けを確保する為の外部空間を家族のプライバシーを守りながらどのように家の中に取り込むか、の2点を中心に構成しています。
H型に部屋を配置し、その間のスペースに前庭・北庭・バルコニーを設けました。各部屋はいずれかの外部空間に面する計画としています。また、駐車場(ガレージ予定地)から前庭~玄関~北庭を飛び石でつなげる事で、敷地の一体感とアプローチ空間のリズムを出し、外部空間を家の中に引き込んでいます。
この家の特徴である玄関はH型配置の中心にあり、前庭と北庭という外部空間をつなぐ線と、子供部屋と家族の空間という内部空間ををつなぐ線の交差部分にあるため、土間仕上(外部空間)の中の飛び石(内部空間)を置き動線が交差できる計画としました。
外部は唯一開放できる方向であった南向きの2階の一部を張り出し、袖壁で持ち上げているデザインとしました。近くを通る高架の電車から、または大通りから見えるこのファサードを端正にまとめる事で、周辺環境の中で際立った存在感の感じられる家となりました。
居室は1階に玄関・寝室と2階にLDKとサニタリー空間を配置しました。2階のLDKは1空間でありながら行動によって使い分けられるよう、H型の中心にキッチンを配置し、それ以外の部分に家族のコーナーである、ダイニング・スタジオ・リビング・サニタリーを振り分けています。
<外観・アプローチ>
車路に面する駐車場部分と細い市道を挟んだ宅地部分のクライアント所有の2つの土地をつなぐ為、駐車場(ガレージ予定地)から前庭~玄関~北庭まで飛び石(現在一部のみ)で繋ぎ、敷地の一体感とリズムを出しています。古くからの住宅街に建つ事から、外部に開く部分(ファサード)、閉じる部分(前庭・北庭・バルコニー)を明確に分けた平面計画と、周辺環境から際立たせるためになるべく端正にまとめた外観デザインになりました。
全体の金属外壁に対し建物足元のアプローチ・前庭部分(ヒューマンスケール)では親しみや温かさを感じられるれるよう不燃の杉板を採用しました。前庭は敷地を通り抜ける飛び石、玄関、子ども部屋、寝室、(上階の)バルコニーに囲まれた家族の空間。動線や視線、声が交差する楽しい場所になって欲しい。コンクリート・金属・砂利・飛び石でなるべくシンプルに仕上げました。
<玄関・ホール>
前庭~玄関~北庭へと飛び石が通り抜けています。クライアントさんの理解もあり、家の中に外部空間が通り抜けるという設計当初のコンセプトが実現できました。飛び石の配置は帰宅時にくつを脱ぐこと、玄関ホールから子ども部屋に行くステップ動線をスムーズにすることを考え、現場でクライアントさんと確認。飛び石は設計当初のコンクリート平板から、元気な息子さんがはだしで駆け抜けることも想定して、エッジが丸く滑らかなものを探してホームセンターや園芸店を回り、最終的には白い御影石になりました。玄関周りは贅沢な広さになっており.玄関も前庭と同様様々な物や行為が交差する空間になりました。ホールの一部分は空間の明るさと子どもの元気さを出す為オレンジ色に。
<寝室・子ども部屋>
寝室と子ども部屋は前庭を介してつながっています。こんな内部のような外部空間はとても楽しい。またポストは前庭の壁についているので、取り出し部分には寝室から手が届きます。朝起きたら寝室から新聞をとって2階のリビングへ。
子ども部屋は今は大きなワンルームであり、将来的には中央に収納を作りカーテンで2部屋に仕切ることで独立時にはまた広い部屋として使えるように計画しました。
寝室・子ども部屋の各居室から庭と、庭を介して他の部屋が望めますが、反面寝室の大きな窓はセキュリティ面から見ればマイナスになります。シャッターをつけることなども検討しましたがその場合には外観デザイン的にマイナスになります。相談の結果、防犯ガラスを採用されました。
<リビング・キッチン・ダイニング・バルコニー>
H型の家の形に合わせ、平面の4隅に水廻り、リビング、ダイニング、スタジオ(勉強・PC・作業スペース)が振り分け、全てをつなぐ中央にキッチンを配置しました。
奥様の朝の家事が少しでも楽になるような動線(水廻り~キッチン~ダイニング)
ご家族がそれぞれの行為をしながらもひとつの空間で過ごせること(LDKの使い分け)
キッチンが家の中心(一番気持ちの良い場所であり、バルコニー越しに来訪者・家族の帰宅が感じられる)
などたくさんの理由があります。またそれらの空間がバルコニーで繋がっている事で、広さと回遊性が生まれました。
リビングの一部にあるトイレの壁は途中までとし床を貼り、間接照明をつけ空間のアクセントにしています。
周辺環境によりLDKは主にバルコニーから採光していますが、2階南側の側窓からの採光はとても効果的であり、青空をインテリアにも取り込む事でとても明るくさわやかな空間となりました。
<その後>
シンボルツリーや芝生を植えた写真を送っていただきました。植物が入ると建物が活き活きしてきますね。